月光の希望-Lunalight Hope-

Re;Stage

3.新たな誓い、新たな約束

いろいろなことが同時に起こって、正直驚いた。

まずは死んだと思っていた自分が、目を覚ましたこと。
そして目覚めてみれば、そこはパレードを行った場所ではなく、今はもうないはずの、アッシュフォード学園のクラブハウスの自室であったこと。
1人だったら、取り乱していたかもしれない。
でも幸いにも、ルルーシュの傍にはC.C.がいた。
ルルーシュが目覚めるよりも少し早く『戻って』きていたらしい彼女は、既に事態をある程度把握していて、簡単に説明してくれたのだ。
その後、ライの様子を見に行くと言って出て行った彼女を見送り、すぐにネットを立ち上げた。

そして、わかったこと。
今が皇暦2017年であること。
つい昨日、黒の騎士団によるチョウフ基地襲撃事件――即ち、藤堂の救出作戦が行われたばかりであること。
それは同時に、今の世界が、ユーフェミアによる歴史上初のナンバーズの選任騎士任命が発表されたばかりであることを示していた。

既に行動を起こした後の世界に戻ってきてしまったことにどうしようか悩み始めたまさにその時、ライが飛び込んできたときには驚いた。
泣きながら抱き締められて、「生きている。よかった」と言われたときには、不覚にも涙が出そうになった。
暫くして、漸くライが泣き止んだと思った途端、今度はスザクが飛び込んできた。
やっぱり泣きながら抱き締められて、ライと同じことを言われて、憎まれていたはずの彼まで自分にそう声をかけてくれて、どうしたらいいかわからなかった。

大変だったのは、その後だ。

スザクが落ち着くより早く、ルルーシュからスザクを引き離したライが、ルルーシュを背中に庇ったままスザクに銃を向けた。
それはたぶん、ルルーシュが護身用にと机の中に隠しておいた銃だ。
ライには昔、そのことを話していた。
だからそれを知っていて、そこから銃を取り出し、スザクに向けたのだ。
ライは、普段の彼からは想像できないほどに、取り乱していて。
ルルーシュを殺される前にスザクを殺すと宣言した彼と、同じく激昂し、ライを返り討ちにしようとするスザクを止めるのに、必死になって。
駆けつけてくれたC.C.と共に何とか2人を宥めて、現在に至る。






手馴れた手つきで紅茶を淹れる。
ティーセットは、ルルーシュが離れるとライとスザクが何をするかわからなかったため、C.C.に頼んで持ってきてもらった。
淹れた紅茶を2人の前に置くと、ルルーシュはため息をついた。
「落ち着いたか?」
「……うん」
「……ああ」
来客用にと用意してあった折りたたみ式のテーブルに向かい合って座る2人は、先ほどまでの勢いはどこへ言ったのか、今はしょんぼりとした様子で目の前に置かれた紅茶を見つめていた。
それにもう一度ため息をつき、ルルーシュは自分の向かい側――椅子に踏ん反り返っているC.C.の前にも紅茶を置く。
「まったく……。今日が休日で、加えてナナリーの診察日でよかったよ」
「ごめん……」
「すまない……」
ぶつぶつと文句を言うと2人は余計に肩を小さくして謝ってくる。
本当に、ナナリーも咲世子も不在で、生徒会室にも誰もいなかったからいいが、誰かがいたらどうするつもりだったのか。
そんな感想を無理矢理押し込めると、軽く咳払いをして、ルルーシュは自分の席に着いた。

「じゃあ、まずは話を整理するぞ」

イレギュラーに弱い自分が一番落ち着いていることに違和感を覚えながら、口を開く。
その言葉にライとスザクは視線だけでこちらを見て、C.C.は当然といわんばかりに頷いた。
「俺たちは、それぞれが死んだ日を最後に時間を遡り、ここに戻ってきた。……と、言うことでいいんだな?」
「ああ。どうやらそうらしい」
ルルーシュの問いに、C.C.が頷く。
その言葉に、スザクが僅かに顔を歪めたのがわかった。
「何が原因かはわからないが、私たちは戻ってきた。皇暦2017年に。今はちょうど、黒の騎士団に藤堂たちが合流し、ユーフェミアが自分の騎士を発表した辺りか」
「えっ!?」
「ああ。まさにその次の日だ。さっきネットで確認したよ」
C.C.の言葉を肯定すれば、途端にスザクの顔が真っ青になる。
「何で……そんなタイミングで……」
「そんなことは知らん」
愕然とした様子で呟いたスザクに、C.C.は冷たく答えた。
長い髪を邪魔だといわんばかりに軽く払うと、そのままカップを手に取り、紅茶に口をつける。
「帰ってきた時間にショックを受けるより、これからの対策を練る方が大事じゃないか?」
「それは、そうだけど……」
C.C.の言葉に、スザクが俯く。
困惑したような表情を浮かべている彼を見つめていると、不意に隣から声がかかった。

「ルルーシュ」

名前を呼ばれて、隣を見る。
その瞬間、自分を真っ直ぐに見つめる紫紺の瞳と目が合った。
夜明けの空を思い起こさせるライの瞳は、まだルルーシュの知る色を取り戻してはいない。
けれど、先ほどよりはずいぶん落ち着いた色をしていて、それに心の中で安堵の息をつく。
ライのあんなに取り乱した姿は、初めて見た。
だから、まだ彼が冷静になれていないのではないかと、ほんの少しだけ不安だったのだ。

「何度でも言う。私は、もう君を失いたくない」

告げられた言葉には、迷いも狂気もなかった。
ただ純粋に――ゼロレクイエムに反対していた頃のような落ち着いた口調で真っ直ぐな言葉を告げられ、ルルーシュは思わず目を細める。
「……ライ」
「君を失う未来は……ゼロレクイエムに繋がる明日は、嫌だ」
「だが、俺はこの時点で、既に……」
「でも、まだ特区設立宣言の前だ。ユーフェミアも、まだゼロの正体に確信を持っていない」
確かに、彼の言うとおりだ。
この時点で、『ゼロ』である自分は多くの命を奪っている。
けれど、まだ決定的な事件は――行政特区の虐殺は、起こっていない。
ユーフェミアは慈愛の姫と呼ばれていて、虐殺皇女なんて汚名は負っていない。
それに、被害だって、世界に進出してしまった後に比べれば、ずっと少ない。
けれど、だからと言って、自分が罪を犯したことは変わらない。
いくら過去に戻ってからと言って、未来で起こした罪が消えるわけでもない。
ライは、きっとそんな自分の考えも全部わかっているのだろう。

「今ならまだ、別の道が探せるはずだ。だから……」

ライが、机の上で拳を握り締める。
その手がカップに当たり、微かな音を立てた。

「だから、ルルーシュ。お願いだ。生きてくれ。今度君を失ったら、私は……」

ぎゅっと力を込める手が、震えている。
その紫紺の瞳から、一度は止まったはずの涙が零れ落ちる。

「私は、きっと生きていられない……」
「ライ……」

手を握ったまま、ぽろぽろと涙を流すライに、何を言えばいいのかわからなかった。
ゼロレクイエムの後、ライがどんな人生を送ってきたのかは、既に聞いた。
あの時、自分と共に逝くはずだったライは、死ぬことができなかった。
心臓が止まったその瞬間、彼の中に眠っていた、契約者から押し付けられていたコードが発現した。
それ以来、彼は数百年もの時を生きてきたのだという。
ずっと世界を拒絶して、隠れるように生きてきた。
ただ世界から拒絶されることだけを願って、コードを解除するためだけに世界を彷徨った。
共にいたC.C.の話によれば、精神崩壊一歩手前の、ぎりぎりの状態だったらしい。

その話を聞いた瞬間、酷い後悔に襲われた。
願ったのは、大切な人たちの幸せな未来だったはずなのに。
けれどライは、自分がいなくなった後、ずっと1人で苦しんでいた。
結局あの結末は、ルルーシュだけが満足して、ずっと傍にいてくれたはずのライを地獄に叩き落してしまったのだ。
それだけがどうしようもなく苦しくて、仕方がなかった。

「……俺もだよ、ルルーシュ」

ふと、耳に届いた声に顔を上げる。
視線を動かせば、先ほどまで俯いていたはずのスザクが顔を上げ、微笑んでいた。
かつての彼からは考えられない、儚げなその表情に、思わず息を呑む。
「スザク……?」
「君とライを殺してから、俺はずっと後悔していた。もっと違う方法はなかったんだろうかって。別の道は、選べなかったんだろうかって」
スザクの言葉に、ルルーシュは目を瞠った。

だってスザクにそんなことを言われる日が来るなんて思わなかった。
あの結末を、一番望んでいたのは、他でもないスザク自身のはずだ。
なのに、その彼の口から後悔なんて言葉が出るなんて、誰が想像できただろう。

そんなこちらの心情をわかっているかのように、スザクは微笑む。
真っ直ぐにこちらを見ていた翡翠が僅かに細められ、視線が手元に落とされた。
「夢を、見るんだ」
「え?」
「ゼロレクイエムの日の、夢を。君を殺した瞬間の夢を、毎晩毎晩。見ない日なんて、1日だってなかった……」
ただ静かに言葉を紡ぐスザクの声は、震えていた。
声だけではない。
体も、ほんの僅かだったけれど、確かに小さく震えていた。
「それからずっと、何もかもが紅く見えて。気持ち悪くて食べ物も食べられないんだ。肉なんて、特に」
「スザク、お前……」
「……確か、ゼロはあれから20年も経たないうちに他界したな」
「えっ!?」
C.C.の言葉に驚き、ルルーシュは思わず彼女を見る。
彼女の言葉が、信じられなかった。
スザクが、あの健康優良児の代表のようだったスザクが、そんなに早く死んだなんて、想像できなかった。
けれど、スザクは否定しない。
ただ静かに笑うだけだ。
「点滴だけの生活だったからね。さすがの俺でも、体が持たなかったみたいだ」
「むしろそれだけで10年以上も現役だったことに驚きだ」
「あはは。きっと医者にもそう言われたんだろうなぁ」
C.C.の言葉に、スザクは苦笑する。
彼には、前の世界で死んだ実感がない。
突然意識が遠のいて、倒れて、気がついたらここにいたと言った。
それを申し訳なく思う反面、ほんの少しだけ安堵した。

自分とライは、心臓を剣で貫かれる、激痛を伴う最期だったから。
せめてスザクがそんな痛みを感じることなく逝ったことだけは、救いだったと信じたかった。
それが、自分の自己満足でしか、なかったとしても。

「それでね、思い知らされたんだ。俺にとって、君がどれだけ大切だったか。どれだけ、君が必要だったのか」

そう言ってスザクは再び微笑む。
手元に落とされていた視線が上がり、翡翠の瞳が真っ直ぐにこちらを見つめる。

「だから、ルルーシュ。僕はもう君を喪いたくない。君に生きていて欲しい」

真っ直ぐにこちらを見つめる翡翠が、揺れた。
そこからじわりと涙が浮かび上がってくるのを見てしまい、ルルーシュは息を呑む。

「君と一緒に、生きたいよ。ルルーシュ」
「スザク……」

スザクが笑みを深めた途端、目尻から一滴だけ零れ落ちる涙。
頬を伝って床に零れたそれに、何と答えて良いかわからなかった。
ただ、それ以上彼を見ていられなくて、目を逸らす。

「俺、は……」

返す言葉が、見つからなかった。
自分には、彼らの言葉に答えることはできないのに。
だって、自分は元々世界に必要なかった人間で。
世界の邪魔者でしかない存在で。
だから。

「生きろ、ルルーシュ」

突然耳に飛び込んできた言葉に、ルルーシュははっと顔を上げた。
声のした方向に視線を向ければ、向かいに座ったC.C.が空のカップを弄びながら、真っ直ぐにこちらを見つめていた。
「C.C.、お前まで……」
「文句は言わせないぞ。私はこいつのせいで散々な人生を送ったんだからな」
「は?」
言われた言葉の意味がわからなくて、思わず聞き返した。
すると、目の前に座る魔女は、呆れたようにため息をついてカップを置いた。
先ほどまで取っ手を弄んでいた指が、真っ直ぐにある方向へ向けられる。

「お前が置いて逝ってから、こいつの荒れっぷりは凄かったんだぞ。そりゃあ言葉にもできないくらいな。そんな坊やのお守りをしていたんだ。私が笑顔でいられたと思うか?」
「え……」

そう言ってC.C.が示したのは、ライだった。
突然話を振られたライは、何故かきょとんとした表情を浮かべ、不思議そうにC.C.を見つめている。
その姿を見た途端、前の世界のことを思い出したのか、C.C.はもう一度、今度は深くため息をつく。
「笑顔どころか泣いて過ごしたさ。まるで夫のDVに堪える妻の気分だった」
「……ライ、君C.C.に何したんだ?」
「……実はあんまり覚えてないんだ」
呆れたように目を細めて尋ねるスザクに、ライは困惑を隠せない笑顔を浮かべ、答えた。

ライ自身、自分がC.C.に何かをしていたというおぼろげな記憶はあるらしい。
しかし、ルルーシュが死んでから数百年もの間、精神崩壊ぎりぎりの心で過ごしていた彼は、魔神として生きたその人生のほとんどを記憶していなかった。
それが精神状態のせいなのか、逆行したことによる何らかの影響のせいなのかはわからない。
実際彼は――そしてC.C.も――自分が死んだときのことは鮮明に覚えているのに、コードを解除した方法は覚えていなかった。

「ルルーシュ」

思考の海に沈みかけていると、唐突に目の前から声がかかった。
顔を上げれば、向かいの席に座ったC.C.が、真っ直ぐにこちらを見つめていた。

「お前は約束したな。私に笑顔をくれると。お前のいない世界で、それは叶わなかった」

ゼロレクイエム以降、C.C.はずっとライと共にあり、世界を拒絶した彼を支えてきた。
ただ泣き続けていたというライの傍にいて、C.C.が笑顔でいられたかと思うか。
そう聞かれれば、誰だって否定をするだろう。
実際に、ルルーシュもC.C.が笑顔でいられたと肯定することはできなかった。

「だから、お前は生きろ。そして今度こそ、私に笑顔を与えて見せろ」

びしっという音が聞こえんばかりの勢いで指を突きつけたC.C.が、はっきりとそう告げる。
その言葉に驚き、ルルーシュはまじまじとC.C.を見つめた。

「C.C.……」

名前を呼ぶが、魔女はそれ以上何も言わない。
ふいっと顔を逸らすと、勝手にティーセットを引き寄せ、自分のカップに新しい紅茶を注ぎ始める。
呆然とその姿を見つめていると、不意にテーブルの上に置いたままだった左手に温もりを感じた。

「ルルーシュ」

名前を呼ばれ、顔を向ければ、いつの間にか傍に寄ったライに左手を握られていた。
先ほどよりも幾分光を取り戻した紫紺が、真っ直ぐに自分を見つめている。

「ルルーシュ……」

ふと、右手にも温もりを感じて、驚いて視線を向けた。
そこには、ライと同じように傍に寄ってきたスザクがいた。
翡翠の瞳風が、真っ直ぐに自分を見つめている。

「ライ……。スザク……」

自分を見つめる二対の双眸から目を逸らし、俯く。
迷いのないその瞳を、見ていることはできなかった。

「俺は……」

振り払わなければならない、この手を。
2人から未来を奪ってしまったのは、紛れもなく自分で。
そんな自分が傍にいることが、2人とっていいことだとも思えなくて。
だから必死に否定の言葉を紡ごうとしたその時、左手を掴む手に、力が込められた。
その瞬間、びりっと電撃が走るような感覚がして、視界が青い光に包まれる。
その感覚を、ルルーシュは知っていた。

「……っ」

目を見開いたその瞬間、目の前の景色が変わっていた。
たくさんの情景が、自分の周囲を走り抜けていく。
まるで数時間前に見た走馬灯のようなそれに、思わず息を呑んだ。

最初に走り抜けた情景の中には、銀の少年がいた。
それが終わり、再び視界が青に包まれたかと思うと、ほんの僅かな間を置いて、再び別の情景が走り抜けていく。
今度のそれには、茶色い髪の少年が――そして、よく知る仮面の男がいた。
同時に流れ込んでくるのは、押し潰されそうなほどの、想い。
おそらくは写真のように流れる情景の中で、その少年たちが感じたもの。
その中で、一番強く感じたのは。

『ルルーシュ……っ!』
『ルルーシュ……』

自分の名を呼ぶ彼らの声と、押し潰されそうなほどの、彼らの気持ち。

「ルルーシュ?」

耳元で名前を呼ばれ、ルルーシュは我に返る。
いつの間にか、周囲の景色は元通り、自分の部屋に戻っていた。
スザクが不安そうな顔で、ライが真剣な表情のままこちらを見つめている。
向かいに座るC.C.は驚きの表情を浮かべていた。
その表情を見る限り、先ほどのこれは彼女のせいではないらしい。
けれど、原因なんて、今は考えられる余裕はなかった。

「……お前たちは……」

以前、経験したからわかる。
これは、2人の記憶だ。
おそらくは、自分がいなくなってから死ぬまで間の、2人の記憶。
何故今こんなものが見えたかなんて、わからない。
過去となった未来で、ライがコードを持っていた影響か、それとも自分のギアスの影響か。
その記憶が告げたのは、偽りのない彼らの気持ち。
自分が死んだ後、ずっと自分という存在を想い続けていた、想い続けていてくれた、ライとスザク、それぞれの想いだった。

ああ、どうして。
どうして彼らはこんなにも、俺を必要としてくれるのだろう?
ずっと信じてくれているライも、一度は憎み合ったはずのスザクも、どうして。

そんな疑問が湧き上がってくる。
聞いてみたいと思ったことは、嘘ではなかった。
けれど、その前に。
その前に、自分は返さなければならない。
そんなにも自分を想ってくれている2人に、想いを返さなければ。
そう思うだけで、それまで感じていた悲壮感が、全部消えていくような気がした。

だって知らなかったのだ。
前の世界では気づけなかった。
いいや、きっと自分は気づこうともしていなかった。
絶望にばかり心を囚われてしまっていて、見落としていた。

「……わかった」

俯いたまま口を開き、小さな声で答える。
それにスザクは「え?」と小さく声を上げ、ライとC.C.は黙ったままこちらを見た。
真っ直ぐにこちらを見つめる三対の瞳を避ける理由なんて、もうルルーシュにはなくて。
だから、顔を上げて、真っ直ぐに彼らを見て、微笑んだ。

「考えるよ、別の道を。俺たちが、全員で生きていける道を」
「ルルーシュ……っ!!」

スザクが嬉しそうな声を上げ、右手を握る手に力を込めてくる。
ライもほっとしたような表情を浮かべ、本当に嬉しそうに目を閉じた。
その2人に笑みを返して、今度は正面を見つめる。
ほんの少しだけ驚いた表情をしていたC.C.は、目が合った瞬間、大げさに息を吐き出し、満足そうに微笑んだ。






そう、前の世界の俺は、全く知らなかったんだ。
自分を必要としてくれる人がいることが、こんなにも嬉しいだなんて。




2009.3.21~4.4 拍手掲載