月光の希望-Lunalight Hope-

Encounter of Truth

11

翌朝は大変だった。
ミレイが二日酔いだと叫んで倒れ、他のメンバーも二日酔いではないにしろ、朝起きられないと言う始末。
ほとんど朝帰りに近い時間帯に返ってきたスザクもこの様子には呆れてしまい、早々にルルーシュとナナリーを連れて女子部屋に避難を決め、一緒に移動していたライも思い切りため息をついた。

「だいたいライ、何で止めてくれなかったのよぉ……」
「止めても聞かなかったのはミレイさんじゃないですか」
ぷうっと頬を膨らませるミレイの言葉に、ライは思い切りため息をついた。
そのやりとりを見て、スザクがこっそりとライに尋ねる。
「そんなに昨日酷かったの?」
「僕が戻ったときにはもう止められない状態になってたんだ」
「あ、あははは……」
「笑い事じゃない」
「ご、ごめん……」
ぎろりと睨みつければ、恐縮したように肩を竦める。
それを見てもう一度ため息をつくと、ライは布団にへばりついている友人たちを見下ろした。
「それより、みんな昼食はどうするんだ?」
「行くわよぉ……。朝も食べてないのに、お昼まで抜いたら動けなくなっちゃう……」
「なら早く着替えて下さい。はい、荷物です」
どさりと、ルルーシュが部屋の奥から持ってきた荷物をミレイの目の前に下ろした。
それを見てミレイはへにゃっと笑う。
「ありがと~。ルルちゃん気が利く~」
「そんな格好で廊下を歩かせるわけには行かないでしょう。リヴァルはともかく」
実は、掛け布団をかけているから今はわからないが、ミレイもシャーリーもニーナも、各々着ている浴衣が思い切り肌蹴て着崩れていた。
だから早く身支度をしてくれと言ったルルーシュの言葉に、床に突っ伏していたリヴァルが勢いよく顔を上げる。
「ちょっ、俺はどうでもいいってこと?」
「男だからな。その程度なら素早く動けば大丈夫だろ」
「……自分が言われると怒るくせに」
「何か行ったか?カレン」
「いいえ。何でもないわー」
ぽつりと呟いたカレンの言葉を耳にしたルルーシュは、彼女を振り返ってにっこりと笑う。
それと目を合わせないように、カレンは慌てて視線を逸らした。
ここで何か言い返そうものなら、ルルーシュに嫌みを言われるだけでなく、機嫌の悪いライにまで何を言われるかわかったものではない。
「じゃあ、僕たちは女子部屋にいますから」
「ナナリー、何かあったらちゃんと呼ぶんだよ」
「はい、お兄様」
床に突っ伏すリヴァルをスザクに押しつけたライが、代わりに彼の荷物を持つ。
荷物のような扱いにぶーぶーと文句を言うリヴァルを完全に無視すると、男子4人は早々と男子部屋を出ていった。
それからカレンが「準備ができた」と彼らを呼びに来るまで、軽く1時間ほどかかったことは、言うまでもないことかもしれない。






「うーん、おいしかったぁ」
レストランから出た途端、ミレイが大きく背伸びをする。
それを見て苦笑しながら、シャーリーが嬉しそうに後ろを振り返った。
「朝ご飯も食べたかったねぇ」
「本当ね」
「まあ、今回ばかりは仕方ないわよ。ちゃんと起きてたの、あいつらだけだったんだから」
同意するニーナの隣で、カレンがため息をつく。
彼女の視線は、ナナリーの車椅子を押すルルーシュと、その後ろから出てきたライとスザクに向いていた。
彼らは酒盛りに参加していなかったのだから、元気なのは当たり前だ。
「さぁて、諸君!これからどうしたい!?」
くるりと振り返ったミレイが、びしっと天井に向かって人差し指を突きつけながら尋ねる。
突然の大声で尋ねられたそれに、最初に反応したのはスザクだった。
「本当なら、観光に行く予定だったんでしたっけ?」
「そうなのよねぇ。今日はもう無理そうだわ」
「誰かさんたちが昼まで寝ていましたからね」
「う゛……」
ルルーシュの指摘に、ミレイは思わず口ごもる。
それを見て、シャーリーが慌てたように口を開いた。
「えっと、近場では考えてなかったんですか?観光って」
「いやぁ、あんまり。明日は自由行動のつもりだったし。ナナちゃんも一緒だから、車椅子でも楽なところを中心にしてたのよ」
「すみません……」
「ああ、いいのよ。悪いのは昨日バカ騒ぎした私なんだから」
しょんぼりと謝罪するナナリーに、ミレイは慌てて首を振る。
予定が狂ったのはナナリーではなくミレイのせいだし、予備のプランを考えていなかったのもミレイの責任だ。
ナナリーには全く非がないのに、謝る必要なんてない。
「じゃあ、結局このあとどうする……」
「ス、スザクっ!?」
スザクがそう尋ねようとした瞬間、廊下の向こうから彼の名を呼ぶ声が聞こえた。
一瞬、その場にいる誰もが耳を疑った。
「え……?」
スザクが、恐る恐る後ろを振り返る。
その瞬間、目に入った人物に誰もが息を呑んだ。
「ユ、ユーフェミア様っ!?」
「ユ、ユフィっ!?何でここに……」
彼女の大ファンであるニーナが真っ先に叫ぶ。
それに釣られたようにスザクが叫んでしまった、その直後。

「いくら休暇中とはいえ、主を呼び捨てというのはどうなんだ?枢木」

廊下に響いた声に、空気が固まる。
ゆらりと、廊下の角から現れたのは、いつもと違う服装はしていたが、見間違いようもない、誰もが知っている1人の女性。

「コーネリア……っ」

ぽつりと、そう呟いたのは誰だっただろうか。
その呟きに、スザクははっと我に返る。
そして一歩前に出ると、慌ててブリタニア式の礼を取った。
「し、失礼いたしました、コーネリア総督」
「ユフィは既に皇族ではないとはいえ、貴様の所属する特区の代表だ。騎士であるならば、そのことを考えて発言をするべきだな」
「は、はい。申し訳ありません」
スザクが慌てて頭を下げる。
その表情に、そしてユーフェミアの顔に焦りが浮かんでいたことに、コーネリアは気づいただろうか。
気づいてないことを祈りながら、ライは小さく深呼吸した。
少し前にいるカレンに素早く目配せをする。
気づいたらしい彼女が、小さく頷いたのを確認すると、顔を上げて一歩前に出た。

「昨晩は我が騎士団の者が失礼いたしました、コーネリア総督」

わざと、少し大きな声でコーネリアの名を呼んだ。
その途端、睨むようにスザクを見ていたコーネリアの視線がこちらに向く。
「ライ・エイドか」
「こんにちは、ご機嫌麗しく存じます」
「ああ……」
ぺこりと頭を下げ、礼を取る――もちろん日本式だ――と、ライはにこりと微笑んでみせる。
そのまま、ごく自然を装って問いかけた。

「ユーフェミア総代表から、本日中にトウキョウへ戻られるとお聞きしていましたが、お時間はよろしいのですか?」
「予定が変わったのでな。明日までここにいることにしたのだ」
「明日まで……ですか……!?」

思わず息を呑んだライが言葉を発するより先に、少し離れた場所から驚きの声が聞こえた。
その声に、ライは喉まで出かかっていた言葉を慌てて飲み込み、そちらへと視線を向ける。
コーネリアもその声に自然とそちらへ顔を向けていた。
「お前は?」
「し、失礼いたしました。アッシュフォード学園生徒会長、ミレイ・アッシュフォードと申します」
「アッシュフォード?……もしや、ガニメテの?」
「は、はい。祖父が開発に携わっていました」
コーネリアに見つめられ、ミレイは慌てて礼を取る。
彼女の顔にも焦りが浮かんでいる。
その理由をライは知っていた。
この中で、自分とスザク、そしてカレンだけが知っている。
彼女が、コーネリアを見て焦っている理由を。
そんな彼女の焦りを、どう感じたのか。
コーネリアは暫くの間ミレイを見つめると、不意にため息を零した。
「そうか……。お前があの家の……」
ふと、口から零れた言葉を聞き取ったライは、不思議そうな視線をコーネリアに向けた。
彼のその視線に気づいているのかいないのか、コーネリアは真っ直ぐに彼女へ体を向けるとそのままミレイに向かって頭を下げた。
「コ、コーネリア様……!?」
突然のその行動に、ミレイは本気で慌てた。
皇族が、たとえ相手が貴族とはいえ、学生に頭を下げることなどないに等しい。
それなのに突然そんな行動をされ、ミレイも周囲も困惑する。
慌てて頭を上げるように頼もうとミレイが口を開くより先に、コーネリアが口を開いた。
「すまなかった」
「え?」
「お前の家がナイトメア開発から手を引くことになったのは、私の不甲斐なさが原因だ」
それは、予想外の謝罪だった。
告げられたミレイ自身、言葉の意味が分からずに困惑する。
「どういうことですか?お姉様」
そんな中、口を開いたのは、ずっとおどおどとした様子で視線を彷徨わせていたユーフェミアだった。
紫の瞳を真っ直ぐに姉に向け、それまでとは違う落ち着いた声で尋ねる。
妹のその問いに、コーネリアはゆっくりと頭を上げた。
「アッシュフォードは、かつて私が尊敬していた皇妃を支えていた一族なのだ。ユフィ、お前もよく知っているだろう?」
「もしかして、マリアンヌ様ですか?」
「そうだ」
コーネリアの言葉に、ミレイははっと目を見張る。
反射的にルルーシュたちを振り返りそうになったけれど、それは必死に押さえた。
そんなミレイの様子をどう捉えたのか、コーネリアは小さくため息を吐き出すと、目を閉じる。

「あの方が暗殺された日、私はあの離宮の警備担当だったのだ。私がもう少ししっかりしていれば、あの方も我が弟妹も守ることができたのかもしれぬ」

静かに語られるその言葉に含まれているのは、きっと後悔の思いだったのだろう。
それを聞いて、ライは僅かに目を細める。
「守れたかもってことは、そのマリアンヌって皇妃様の子供って……」
「亡くなられたって聞いてるわ。戦争中に」
小さく呟いたシャーリーの問いに、顔を寄せてニーナが答えている。
彼女たちは、自分たちのその会話に友人がひやひやしているとは夢にも思わないだろう。
その会話が耳に届いたのか、コーネリアは目を開けると、ゆっくりと彼女たちの方に視線を向けた。
目が合ってしまったのか、2人とリヴァルはびくりと肩を跳ねさせる。
「生きていれば、お前たちくらいだったかもしれんな」
「……そう、なんですか……」
哀愁を含んで口にされた言葉に、友人たちはなんと返せばよいかわからないという顔で肩を落とす。
それはそうだ。
そんなところでこんな話をされ、ただ平凡な一般人である彼らに何を言えというのか。

いや、それよりも。

こんなときにありがちな、その亡くなった人物はどんな人物だったのか聞こうとする流れ。
その流れにはさせないようにと、ライが口を開こうとしたそのときだった。

「ところで、そこのお前たちは挨拶もせずにどこに行くつもりだ」

コーネリアが、それまでの哀愁を含んだ声とは一変した低い声で言葉を発する。
その言葉に、ライははっとしてコーネリアの視線の先を見た。
今まさにさりげなく廊下を曲がろうとしたカレンが、びくりと肩を震わせるのが目に入った。
その彼女の前に、ルルーシュと、彼が押す車椅子に乗ったナナリーがいる。
それを確認し、ライは口の中で小さく舌打ちをした。
「見たところブリタニア人のようだが……」
「ち、違うわ」
ドスの利いたその声に、カレンが慌てて振り返る。
そのまま、空色の瞳でぎっとコーネリアを睨みつけた。
「私は日本人……ゼロの親衛隊長よ」
「お前……?」
コーネリアが訝しげな顔でカレンを見つめる。
しかし、そんな表情を浮かべたのは一瞬で、すぐに何かに気づいたように目を瞠った。
「そうか、紅蓮の……」
「そ、そうよ」
「カレン」
「そ、そう、です……」
ライが声をかければ、彼女は戸惑いながらも口調を改める。
いくらかつては敵であったと言っても、今の自分たちはブリタニアと協力して運営している特区の幹部なのだ。
このエリアの総督であるコーネリアに、かつてのままの口調で怒鳴りつけるのはかなりまずい。
そう判断して声をかけたのだが、カレンもその意図を汲み取ってくれたらしい。
だが、そんな2人の小さな努力も、肝心のコーネリアには伝わらないらしかった。
「特区の日本側の代表である男の騎士が、私に挨拶なしに逃げようとするとは、ゼロの器もしれるものだな」
「な……!?」
「カレン」
ゼロを馬鹿にされ、頭に血を上らせるカレンに、ライが先ほどよりも鋭い声をかける。
その声に、反射的にこちらを睨んだカレンに向かって首を振れば、彼女もその意味を理解してくれたのか、はっと目を見開き、しぶしぶと言わんばかりに黙り込んだ。
それに内心でほっと息を吐き出すと、ライは真っ直ぐにコーネリアを見つめ、口を開いた。
「失礼いたしました、総督。カレンには僕が、友人を部屋に連れて返って欲しいと頼んだんです」
「友人?」
「ええ。少し具合が悪い連れがいたものですから」
「それがあの2人と言うわけか?」
「はい」
顔に仮面を貼り付けて、にこりと微笑む。
その途端、ぱんっと軽く手を叩く音がした。
視線を向ければ、ユーフェミアが少しぎこちない笑みを浮かべていた。
「そういう事情なら仕方ないわ。ライ、カレンさん、早くその方たちをお部屋に連れていってあげて」
にっこりと微笑む彼女の表情は、堅い。
けれど、それを悟られまいと必死になりながら、精一杯虚勢を張って傍にいる姉に向き直る。
「いいですよね?お姉様?」
にこりと微笑んだ彼女が訪ねるけれど、それでもコーネリアは首を縦に振らない。
ただじっと、振り返ることのないルルーシュとナナリーを見つめている。
「……お前たちは……」
そのままコーネリアが何か言葉を発しようと口を開いた、そのときだった。

どおんと、巨大な爆発音が辺りに響いたのは。

「きゃあああああっ!!」
「な、なんだっ!?」
激しい揺れを伴うそれに、シャーリーとニーナが悲鳴を上げ、リヴァルが叫ぶ。
一瞬地震かと思った。
租界では構造上あまり気になることのないそれが、直接地面の上に建っているこの宿では直接響いてきたのだと。
けれど、それは違う。
それならば、あんな爆音はしない。
何より、彼らに直ぐにその平和な予想を否定させたのは、彼らの言葉だった。

「今の音……。この震動は、まさか爆発?」
「ああ、たぶん……」

冷静にそう告げたのは、黒の騎士団の一員であるライと、ユーフェミアの騎士であるスザク。
戦場に身を置いていた2人がそう言うのならば、他の者たちがそれを信じない理由などない。
「ええっ!?何で旅館が爆発なんてするんだよっ!?」
「わからない。事故か何かが、もしかして……」
思わずリヴァルが彼らに向かって叫ぶ。
それにライが答えようとした、そのときだった。

「動くなっ!!」

廊下の影――コーネリアとユーフェミアがやってきたのとは逆方向――から、何かが飛び出してきた。
「えっ!?」
「何っ!?」
それに皆が反応するより早く、ぱんっと乾いた破裂音が響き、近くにあった壁が弾ける。
「きゃああっ!!」
それを間近で見てしまい、悲鳴を上げたニーナを、ミレイが反射的に抱き寄せる。

「いたぞっ!!コーネリアとユーフェミアだ!!」
「枢木スザクもいるぞっ!!間違いないっ!!」

次々と廊下の角から現れた者たちが、宿の従業員のはずがない。
武装し、目の部分だけを覆う覆面で顔を隠した彼らを、コーネリアが睨みつける。
「何だっ!お前たちっ!」
その瞬間、ライは目を見開いた。
コーネリアが怒鳴りつけた途端、連中の1人が腕を上げた。
その手には、黒光りする銃が握られている。
狙いはおそらくコーネリア――だが、その手前には、別の人物もいた。

「っ!?ルル!!」

その判断は、ほとんど一瞬。
銃を持った何者かが、その照準を合わせ終わったと判断した瞬間、ライは走り出していた。
驚いて振り返るルルーシュを突き飛ばし、ナナリーの座る車椅子に体当たりをして、横倒しにする。
その瞬間、何かが倒れる大きな音に混じって、破裂音があたりに響いた。

「きゃあああっ!?」

辺りに悲鳴が響く。
はっと顔を上げたけれど、直ぐ傍にいるルルーシュには怪我はないようだった。
直ぐに視線を移して、ナナリーを確認する。
突然、何も言わずに突き飛ばしてしまったせいで体を床に打ってしまったらしい。
けれど、銃弾が当たった様子はなく、ライはほっと胸を撫で下ろした。

「ぐ……っ」
「お姉様……っ!?」

直後に聞こえた呻きと悲鳴に、ライははっと視線を戻す。
見れば、コーネリアが右腕を押さえて膝を突いていた。
どうやら銃弾は彼女に当たったらしい。
腕を押さえる白い手袋が真っ赤に染まっている。
苦痛に顔を歪める彼女を、真っ青な顔をしたユーフェミアが支えていた。

「動くなっ!!ブリタニアと売国奴どもっ!!」
「きゃあっ!!」

目の前から聞こえた悲鳴に、ライは慌てて視線を戻す。
見れば、いつの間にか目の前に連中の一人が立っていた。
イントネーションから判断するに日本人だろうその男を見た瞬間、傍にいたルルーシュが大きく目を見開く。
「動くとこの小娘の命はないぞっ!!」
「っ!?ナナリーっ!?」
男は、ナナリーの腕を掴んで無理矢理立たせようと引っ張り上げていた。
痛むのか苦痛に顔を歪めるナナリーの目の前に、拳銃まで突きつけて。
「ナナちゃんっ!?」
「ナナリーっ!!」
それを見たシャーリーとスザクが叫ぶ。
その声に、別の反応をした人物がいた。

「ナナリー、だと……!?」

コーネリアのその呟きに、ライは口の中で舌打ちをする。
けれど、今はそれどころではない。
そう判断して頭を切り替え、立ち上がろうとしたそのとき、目の前に誰かが立った。

「何なんですか!?あなたたちは……っ!?」

顔を上げれば、それはミレイだった。
後ろ姿で表情はわからなかったが、ほんの僅かに震えた声で、連中を怒鳴りつける。
彼女のその言葉に、ナナリーの腕を掴みあげた男はにやりと笑った。

「我々は真日本解放軍。ブリタニアに隷属する特区とブリタニアの犬に成り下がった黒の騎士団に鉄槌を渡すものなり!」

心の中で、やはり、と思う。
そんな名を名乗る連中がいることは、ライとカレンの耳も届いていた。
彼らが知っているのだ。
もちろんルルーシュとユーフェミアだって知っている。
けれど、まさかこんなところで、こんなタイミングで遭遇するとは。

「コーネリア・リ・ブリタニア、ユーフェミア・リ・ブリタニア。お前たちには我らが真の日本を取り戻すための人柱となってもらうぞ」

そう言ってにやりと笑う男は、怯えるナナリーに楽しそうな顔で銃を突きつける。
それを見て、ぎりっと歯を噛みしめるルルーシュに、ライは僅かに目を細めた。




2010.06.16