最愛の契約者
おまけ
「お前たちの契約に物申すぞっ!」
突然自動のはずの扉が、ばーんと音を立てて開かれる。
同時に施設の中に飛び込んできた魔女と銀の少年の姿に、すっかり和んでいたルルーシュとスザクは驚き、勢いよく振り返った。
「うわっ!?C.C.っ!?ライっ!?」
「お前たち、まさかずっと見てたのかっ!?」
「だって警備員が来たら困るだろ」
いけしゃあしゃあと当然のことだと言い切るライに、ルルーシュはほんの少しだけ殺意を覚える。
そもそもこの場所をスザクとの待ち合わせに指定したのはルルーシュではなく、ライだ。
彼が何を思ったのか知らないが、勝手に指定しておきながら、なんて言い草だろう。
明らかに不機嫌なライに気づかず、思わず言い返そうとしたそのときだった。
C.C.がその細い指をびしっと突きつけた。
スザクの鼻先に向かって。
「いいかルルーシュ!私はこいつにコードを全て渡すつもりはないからな!」
「はっ!?」
「おい、C.C.っ!約束が違うだろうがっ!」
「最後まで聞け!全ては渡さないと言ったんだ!」
予想外の言葉に思わず言い返せば、C.C.はきっぱりと言い放つ。
その意味がわからずに睨み返せば、魔女は不機嫌な表情のまま、ふんっと鼻を鳴らした。
「私がこいつに継承させるコードは半分だけだ。半分は譲らん!覚えておけ」
「半分って……」
「まあ、当然だな。スザクだけにルルーシュ独り占めさせる気はないから」
「え……」
「こいつはもともと私の共犯者で、ライの誓約者だ。私たちは全員運命共同体というわけだな」
「ちょ……」
「そういうわけだから、覚悟しておけよ、スザク」
「え……」
ライが、スザクに向かってにっこりと微笑む。
その隣で、C.C.が彼と同じ凶悪な笑顔を浮かべ、にっこりと笑った。
「約束の日まで、僕が補佐についてみっちり鍛えてやる」
「え?」
「コードを継承するまでは、私がみっちりギアスの使い方を教えてやろう」
「え?え?」
戸惑うどころか恐怖さえ覚えていますと言わんばかりに表情を強張らせるスザクに、魔女と狂王はさらに笑みを深めた。
魔王と呼ばれた少年は、後に語る。
2人の笑顔は、それはそれは凶悪なものだったと。
「「ルルーシュとの約束の日まで、健やかに過ごせるなんて思うなよ」」
「ええええええええええええええっ!!?」
ぽんっと肩を掴んで、にっこりと微笑んでまま告げられた言葉に、スザクが絶叫する。
驚愕とも恐怖とも取れるその声に、ルルーシュは呆れたようにため息をついた。
「……お前ら」
「お前に文句を言われる筋合いはないぞ、ルルーシュ」
「そうそう。50年したら僕たちの居場所を取られるんだ。このくらいの報復は許してもらうよ」
不機嫌そうなC.C.が、にっこり微笑んだライが、それぞれスザクから視線を外し、ルルーシュに向けて言い放つ。
2人の目を見た瞬間、悟った。
ああ、こいつらを止めることはもう不可能だ。
というか、ここでスザクの味方をしたら、自分の方が危ない。
ぽんっとルルーシュの手がスザクの肩に乗せられる。
助かったと言わんばかりにこちらを見たスザクから視線を逸らし、ぽつりと口を開いた。
「……がんばれ、スザク」
「ルルーシュぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
とても珍しいスザクの悲鳴が学園中に響き渡ったけれど、今のルルーシュに彼を助けてやれる手段があるはずもない。
自らの身の安全を優先した彼は、最愛の契約者をいとも簡単に魔女と狂王に売り払ったのだった。