月光の希望-Lunalight Hope-

その先にある明日

心なしか、風が強くなったような気がする。
空を見上げる。
広がるのは、雲一つない蒼い空。
あの頃のように偵察用のヘリが飛ぶことも、KMFが空を飛ぶこともない――ないはずだった空。
けれど、やはり世界は簡単ではなくて。
やはり、こんなにも、思いどおりにならない。
「だから行くのか?」
背中から声がかかる。
それが誰だか知っているから、振り返ることはしない。
「ああ」
「君はもう『死んでいる』のに?」
「それはお前も同じだろう?」
ここにいるのは奇妙な運命に飲み込まれた者同士。
同じ道を歩くと誓った誓約者。
「だから、君とここにいる」
「そう。だから、どうする?」
そう尋ねて、初めて振り返る。
視界に入ったのは、光を弾くシルバーグレイ。
真っ直ぐこちらを見つめる紫玉を、見つめ返す。
そして、真っ直ぐに手を伸ばした。
「また、俺と共に来てはくれないか?」
紫紺の瞳が、ほんの少しだけ驚いたように見開かれる。
それから、深いため息をついた。
「君はずるいな」
「そうかな?」
「ああ、ずるい」
少しだけ伏せられた紫紺が、再びこちらを見る。
それは、軟らかく細められた。
「僕が、決して断らないと知っているくせに」
「俺はお前を疑っていないからな」
いけしゃあしゃあとそう言えば、紫紺の持ち主は嫌がるどころか、嬉しそうに微笑んだ。
「それは光栄だ」
「お前も、変わらずそう在ってくれるんだろう?」
「ああ、もちろん」
差し出したままだって手を、紫紺の持ち主が取り、握り返す。
「僕はいつも、どんなときも、ずっと君の隣で歩き続けよう」
その言葉どおり、いつも、自分がどんな立場になっても側にいてくれた。
彼だけがずっと、自分を信じ続けてくれていた。
「では、行こう。ライ。俺たちが歩むべき明日へ」
「ああ、ルルーシュ」
手を取り合って、2人は歩き出す。
その先にある、光の向こう。
かつてと変わらない願いの、その先にある明日。
もう一度、そこを目指すために。




復活の特報で殴り書いたもの。
2019年2月が楽しみすぎてやばい。



2018.08.03