月光の希望-Lunalight Hope-

 

悪逆皇帝が死んだ。
その日を、祝いの日だと喜ぶ人がいる。
世界が解放された日だと、笑う人がいる。
一度は死に、再び蘇った仮面の英雄が、世界を救ったのだと、世界が称える。

その仮面の英雄が、その皇帝の騎士だなんてことも知らずに。
この平和を導いたのが、他ならぬその悪逆皇帝だとも知らずに。

嘘ばかりの世界で、自分すら偽り続けて生きていた、第99代ブリタニア皇帝。
裏切りばかりの世界で、自分すら裏切って生きていた、ナイトオブゼロ。
この平和が、最初から2人の計画の上で成り立っているなんて、世界は知らない。
知っているのは、彼らを知っていた一部の人間だけ。
けれど、その人間さえも、知らないだろう。

全てを背負って消えた、皇帝の本心も。
自らを殺し、仮面を被って生き続ける仮面の英雄の本心も。
そして、いつの間にか姿を消していた、もう1人の騎士の本心も。

世界は知らずに罵り、称え、動き続ける。
終わらぬ『明日』を求めて、続いていく。

それが彼の望み。
たくさんのものを喪い、たくさんのものを捨て、たくさんのものを愛した、彼の。
最期の、そして漸く見つけた『真実』の望み。

だから、俺は。僕は。私は。
誰が何と言おうと。
誰も彼のことを理解しようとしなかったとしても。
この気持ちだけは、忘れない。
彼がくれた大切な、この『真実』の想いだけは、絶対に忘れない。

「「「ずっと愛しているよ、ルルーシュ」」」

仮面の英雄が、片割れに居続けた騎士が、魔女が、空に向かって手を伸ばす。
もういない、彼らの唯一の王。
世界の全てを愛し、眠りについた彼に送る、唯一の。

あい の ことば

だから、どうか安らかに。





2008.9.29~10.7 拍手掲載