最大の謎
神聖ブリタニア帝国第99代皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
その騎士には、ナイトオブゼロの称号を持つ2人の少年がついていた。
かつての皇帝の騎士ナイトオブラウンズは、事実上解体されてしまっており、今彼の騎士として存在するのは名実共に彼ら2人だけ。
その2人の、色の違いはあれど、全く同じデザインの衣装を見つめながら、拘束衣の魔女は唐突に口を開いた。
「……ずっと思っていたんだが」
「ん?」
「どうかした?C.C.」
「お前たち、その腰のベルトは何なんだ?」
「「え?」」
マントはつけていない騎士たちの、腰に巻きつけられているベルトを刺し、C.C.は尋ねる。
一瞬きょとんとした表情を浮かべたスザクが、隣の友人を指足した。
「何って、ライを見ればわかるだろ?」
「ライを見ればって……あ」
ライに視線を移した瞬間、C.C.は間抜けな声を上げる。
ライは、先ほど城下で起きた暴動を鎮めに行き、戻ってきたばかりだ。
ナイトメアの必要ない戦いには、もちろん武器が必要で。
ライの腰のベルトには、騎士となってから彼がメインの武器としている剣が括りつけられていた。
「なるほど、剣の鞘を繋ぐベルトだったわけか」
「パイロットスーツ兼用なもんでね。こうでもしないと着けられないんだ」
「剣はもちろん、銃もね」
確かに、ポケットも何もないその服では、武器を身につけるには他の何かが必要になるだろう。
あのマントだって無駄にびらびらしているわりには、武器を仕込むには不便なものだった。
「だが、ラウンズ時代も銃を持っているようには見えなかったが」
「あれは上着の中にも隠せたし。あ、もちろん必要なときは、ベルトをつけていたけど」
「さすがにこれは無理だしね」
上着も何もないこの騎士服に、銃を隠すことができるはずもない。
「ホントなんでこんな衣装なんだか。いや、模様の意味だってわかってるけどさ」
「ギアスか。あいつらしいといえばらしいが……」
紅い瞳に、鳥の翼。
関係者が見れば嫌でもわかるだろう。
まったく、象徴を服に刻むのはよいが、もう少し何とかならなかったものか。
スザクとC.C.が思わずため息をついた、そのときだった。
「……それよりも、スザク、C.C.。僕、とんでもないことに気づいてしまったんだけど」
「ん?」
「どうした?」
先ほどから妙に深刻な顔をしていたライが、唐突に口を開いた。
そのあまりにも真剣な顔に、2人は思わず眉を寄せる。
「今はいいんだ。僕も何度かルルーシュの代わりに着たからわかる。あれは確かに隠せる。けど……」
「はあ……?」
「一体何の話だ?ライ」
話の内容が、全く掴めない。
だから尋ねたのだけれど、その途端、ライはぎぎぎっと音が聞こえそうな動作で2人を振り返った。
「ほら、C.C.。ルルーシュって、ゼロの衣装のときは必ず銃を持っていたじゃないか」
「ああ、そうだったな」
ルルーシュは、ゼロであるときは常に護身用だと言って銃を手放すことはしなかった。
それは、ゼロとして動き始めた頃からずっと変わらない。
ゼロの衣装を納めた鞄の中には、必ず銃と銃弾が入っていたことを、C.C.は知っている。
だが、今更それが何だというのか。
それを尋ねようと口を開こうとした、そのときだった。
「1年前の、あの上着も何もないピッチピチのゼロ服の何処に銃持ってたんだ?彼」
ライの告げた言葉に、C.C.とスザクが固まる。
「……あ」
「そういえば、そうだな」
「何で君らが今更そんな反応するんだ!?C.C.、君は影武者してたことがあるんだろ?スザクにいたってはあの服のルルーシュの上に馬乗りになったって聞いたぞ!」
「誰から!?」
「ルルーシュ本人から!」
とんでもない事実に思わず叫んだスザクに、ライが叫び返す。
そんなことしたかと慌て出すスザクの隣で、それが1年以上前の神根島でのことだとすぐに理解したC.C.は、腕を組んで首を捻った。
「マントの中には、何も仕掛けがなかったな」
「確かにあの衣装に銃を持つのは不可能な気がするんだけど」
「唯一外から手を入れられるのって胸元だけだけど、あそこに銃が入ってたらいくらなんでもわかると思うし」
「「「うーん……」」」
C.C.とライだけではなく、スザクまでも本気になって考え出す。
考えれば考えるほど不思議だった。
一体あんなぴちぴちの服の何処に銃を隠していたのだろう、ルルーシュは。
「……お前たち、一体何をしてるんだ?」
他人から見れば、本当にどうでもいい疑問。
3人の議論は、話題の中心である皇帝本人が現れるまで、途切れることなく続いたという。
ああ、ナイトオブゼロの騎士服のベルトってあれか、と。
C.C.が下ネタ発して終わりのはずだったのですが、いつのまにゼロ服の話に。
というか、どなたか思いませんでした?