夢の国
「冬だっ!」
「えーっと、休日だっ!」
「「夢の国だっ!!」」
チバにある、巨大テーマパーク。
2つある遊園地のうちの片方の入口で、拳を振り上げるカレンと、彼女の真似をして同じように腕を振り上げたライを見て、ルルーシュは思わずため息をついた。
「……元気だな、お前たち」
「当ったり前でしょうっ!!だってせっかくのネズミーランドなのよっ!」
ぐっと拳を握り締めたまま、カレンが振り返る。
妙に輝いているその目に呆れのため息を吐き出しながら、ルルーシュは彼女の隣へ視線を向けた。
「というか、お前がノリノリだとは思わなかったぞ、ライ」
「だって、カレンにやれって言われたから」
「ちょっとぉっ!何よその言い方っ!!」
「ご、ごめんっ!」
ぎろりとカレンに睨まれ、ライは反射的に謝る。
それを見て、ルルーシュは再び呆れたようにため息をついた。
誤魔化すように乾いた笑いを漏らしたライは、何とか空気を変えようと、ルルーシュに顔を向けた。
「そもそも、何でネズミーランドっていうんだ?ここ」
「とある映画会社にネズミをモデルに作られたキャラがいてな。ここはそれを元にした遊園地なんだ」
「へぇ……」
「ブリタニアにも同じ遊園地があって、そっちが本家なのよね。悔しいけど」
「7年前の戦争以前に造られた支店……という言い方はおかしいが、それがここだな。本家もブリタニアで大人気だったから、日本のも残しておいたらしい」
「なるほど……」
ルルーシュの説明に、ライは感心したように頷く。
まあ、好きな人間に言わせれば、もっといろいろ説明のしようがあるだろうが、生憎ルルーシュはあまり遊園地には興味がない。
まあ、名前の由来さえわかればいいだろうからと、敢えて深い説明はしなかった。
その2人のやり取りの間にも、客はどんどん入ってくる。
その光景を見て、焦りでも湧き上がったのか、突然カレンが腕を振り上げ、大声を上げた。
「えーいっ!そんな難しいことはどうでもいいのっ!今日はめいいっぱい遊ぶんだからっ!!」
「だからって、一番混んでいるクリスマスシーズンを選ぶな」
「何言ってるのっ!クリスマス当日よりはずっと空いてるわよ!まだ学生はクリスマス休み前で、授業があるんだから」
「……それなのに、いいのか?いくら仕事は休みだからって、学園サボってこんな……」
「あーっ!もうっ!ライは固く考えすぎなのっ!!」
カレンがライの背中をばちんと叩く。
強い過ぎるその力に、ライは思わず小さく悲鳴を上げた。
「私たち、普段は仕事だ学校だって、全然遊びに行けないんだもの。たまにはいいじゃない」
「それは、そうだけど……」
「そ・れ・にっ!」
尚反論しようとしたライの服の襟を掴み、カレンは彼を自分の傍へと引き寄せる。
そして、ルルーシュには聞こえないように、そっと耳打ちした。
「たまには、ルルーシュを楽しませてあげたいでしょう?」
カレンのその言葉に、ライは目を瞠る。
けれど、それは本当に一瞬で、その紫紺の瞳は、すぐに優しそうな笑みと共に細められた。
「……そうだね」
つい最近まで、仮面を外せなかったルルーシュ。
先日もらったばかりのコンタクトを左目につけて、漸く素顔を晒して表を歩けるようになった。
けれど、未だ暴走してしまったギアスに不安を抱いていて、仮面なしで人の多い場所に出ることを嫌がっている。
遊ぶことを拒絶するのは、その不安もあるのだろう。
他人と視線を合わせないように、僅かに俯いているのが、その証拠だ。
けれど、ここで大丈夫ならば。
今日をめいいっぱい楽しむことができれば、きっとそんな不安も消えるだろう。
あまりにも見つめすぎたのだろうか。
ライの視線に気づいたルルーシュが、こちらへと視線を向け、首を傾げた。
「?何だ?」
「何でもないわよ!それよりも!」
駆け寄ったカレンが、がしっとルルーシュの右腕を掴む。
驚くルルーシュににっこりと笑いかけて、自身の右腕を勢いよく振り上げた。
「行きましょう、ルルーシュ!まずはビックサンダーよっ!!」
「はあっ!?」
「カレン。ビックサンダーって何だい?」
「山をね、列車の形した乗り物で勢いよく降りてくアトラクションなの!すっごく楽しいんだから!」
「へぇ。楽しみだな」
カレンの説明に、いつの間にかルルーシュの左側に回り、彼女と同じようにがしっと腕を掴んだライが、にっこりと笑う。
2人の間で、ルルーシュの顔がさあっと青くなった。
「ちょ、ちょっと待てっ!?俺は絶叫系は……」
「さあさあ!行くわよぉーっ!今日は回りたいとこ、絶対全部回るんだから!」
「お、おいっ!カレンっ!」
「カレンの回りたいところって楽しそうだな。僕も楽しみだよ」
「ま、待てライっ!!」
「たっのしいわよぉ~!期待しててよね!」
「だから、待てと言ってるだろうっ!!カレンっ!ライっ!」
叫ぶルルーシュを無視して、ずるずると目的のエリアまで引きずっていく。
黒の騎士団一のナイトメアパイロット2人に腕を組まれては、体力のないルルーシュが逃げられるはずもない。
それでも、ルルーシュは絶叫に乗りたくない一心で、必死に抵抗を続けた。
「ほわああああぁぁぁぁぁっ!!」
数分後、抵抗も空しく絶叫系アトラクションに乗せられたルルーシュの悲鳴が、遊園地に響き渡った。
ナイトメア乗りは絶叫系は絶対に平気だと思います。
個人的にルルーシュは絶叫系だめだと萌え。
そしてぐったりしたルルーシュにライカレが必死に謝っていればよい(え)
2009,1,2 修正